研究報告(伊藤伸幸)- 2023.4.18
更新日:2023.4.18
2022年度は、モニュメンタルな遺構(土製建造物)・遺物(素面石碑)から、ホンジュラス西部のコパン遺跡とエルサルバドル西部に位置するチャルチュアパ遺跡の関係を追究した。
チャルチュアパ遺跡では、先古典期中期から土製建造物がつくられたとされる。2022年度の調査において、チャルチュアパ遺跡における記念碑的建造物の起源を探った。2022年夏と2023年春に発掘調査を、エルサルバドル最大のE3-1建造物で実施した(図1)。2023年春の発掘で、この土製建造物がつくられた時期若しくはそれよりも前の床面を検出した。一方、後代の石造建造物に覆われているが、コパン遺跡初期の建造物は土製である。また、建造物が粘土や細かな粒子の土などでつくられていることも確認された。今後は、コパン遺跡の土製建造物と建築構造などを比較し、チャルチュアパ遺跡との関係を解明する。
素面石碑は、自然の石若しくは整形のみが施された石彫である(図2)。意味のある浮彫りなどの彫刻は施されていない。チャルチュアパ遺跡では8基、コパン遺跡でも1基出土している。2022年度は、全メソアメリカで、素面石碑の出土遺跡の事例を収集した。この石彫は、メソアメリカ全域では先古典期前期から後古典期まであり、メキシコ西部以外の地域に分布している。また、メソアメリカ南東部太平洋側に集中して分布している。一方、この素面石碑には、柱状節理を利用して切り出された石柱がしばしば利用されている。今後は、コパン遺跡とチャルチュアパ遺跡の素面石碑をメソアメリカ史のなかに位置づけ、相互の関係を明らかにし、文化交流の実態を解明する。
以上の研究を、今後展開されるパレオゲノミクス研究の成果と比較研究する考古学的基礎資料としたいと考えている。