研究報告(市川彰)- 2023.04.10
更新日:2023.04.10
分担研究者市川は、初年度である2022年度には既存の考古学データを用いて、エルサルバドルとホンジュラスに栄えた諸都市の交流関係について主に土器を中心とする物質文化から考察することに努めた。土器の分析では、コパン王朝が創設される紀元後5世紀頃の土器とエルサルバドル西部にあるチャルチュアパの土器に類似性が認められることがわかった(図1)。この土器の類似性が、どのようなメカニズムで生じているものなのか、さらに放射性炭素年代測定の分析結果なども考慮し、検討してく必要がある。また、エルサルバドル中央部サポティタン盆地の中核的な都市であったサン・アンドレスでは、紀元後7世紀頃からコパンの影響がみられるようであり、それは土器だけでなく、球技場に据え付けられたコンゴウインコの石彫様式、双頭の蛇のモチーフなどにもみられる(図2)。エキセントリック型石器も見つかっており、コパンがサン・アンドレスとも深い交流を有していたことが示唆される。こうした一連の成果は、今後進められていく古人骨の分析結果の解釈にも有益であると考えられるため、現在、欧文での論文執筆、学会発表の準備を進めている。
上記の研究活動に加えて、2022年7月に金沢大学および公立小松大学の学長らのティカル遺跡表敬訪問の支援をおこなった。コパン遺跡とも関係が深いティカル遺跡での今後の比較研究を視野にいれた研究基盤の足掛かりを得ることができた。